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最高裁平成14年1月29日判決
要旨
民法724条は、不法行為に基づく法律関係が、未知の当事者間に、予期しない事情に基づいて発生することがあることにかんがみ、被害者による損害賠償請求権の行使を念頭に置いて、消滅時効の起算点に関して特則を設けたのであるから、同条にいう「損害及ヒ加害者ヲ知リタル時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれらを知った時を意味するものと解するのが相当である(最高裁昭和45年(オ)第628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁参照)。そして、次に述べるところに照らすと、同条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解すべきである。
 不法行為の被害者は、損害の発生を現実に認識していない場合がある。特に、本件のような報道による名誉毀損については、被害者がその報道に接することなく、損害の発生をその発生時において現実に認識していないことはしばしば起こり得ることであるといえる。被害者が、損害の発生を現実に認識していない場合には、被害者が加害者に対して損害賠償請求に及ぶことを期待することができないが、このような場合にまで、被害者が損害の発生を容易に認識し得ることを理由に消滅時効の進行を認めることにすると、被害者は、自己に対する不法行為が存在する可能性のあることを知った時点において、自己の権利を消滅させないために、損害の発生の有無を調査せざるを得なくなるが、不法行為によって損害を被った者に対し、このような負担を課することは不当である。他方、損害の発生や加害者を現実に認識していれば、消滅時効の進行を認めても、被害者の権利を不当に侵害することにはならない。
 民法724条の短期消滅時効の趣旨は、損害賠償の請求を受けるかどうか、いかなる範囲まで賠償義務を負うか等が不明である結果、極めて不安定な立場に置かれる加害者の法的地位を安定させ、加害者を保護することにあるが(最高裁昭和49年(オ)第768号同年12月17日第三小法廷判決・民集28巻10号2059頁参照)、それも、飽くまで被害者が不法行為による損害の発生及び加害者を現実に認識しながら3年間も放置していた場合に加害者の法的地位の安定を図ろうとしているものにすぎず、それ以上に加害者を保護しようという趣旨ではないというべきである。
 これを本件について見ると、上告人は、平成4年7月9日の時点においては、被上告人共同通信社の加盟社である同下野新聞社の発行する新聞紙上に本件配信記事に基づく記事が掲載されている可能性が高いことを知ったにすぎず、本件記事が実際に掲載されたこと、すなわち同被上告人が上告人の名誉を毀損し、不法行為に基づく損害が発生したことを現実に認識していなかったというのであるから、同日をもって消滅時効の起算点とすることはできないといわなければならない。 


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