離婚と氏の変更

事 例
横井一郎と正子(旧姓田中)の間に子、太郎がいましたが、両親が離婚し、正子が太郎の親権者となりました。正子、太郎の氏はどうなるでしょうか?


離婚と親の姓
まず、夫婦が離婚すると、正子は元の氏である田中に戻りますが、離婚の日から3ヵ月以内に届け出ることにより、婚姻中の氏である横井を称することもできます(婚氏続称といいます。)。

離婚と子の性
太郎の氏は、親が離婚しても当然には変わりません。したがって、太郎は依然として横井姓を称し、父の戸籍に残ります。
しかし、正子が旧姓である田中姓を称する事にした場合、太郎は親権者である正子と住んでいるのに、母と子の氏が異なることになり、不都合です。このように、子の氏が親と異なる場合には、家庭裁判所の許可を得て、子の氏を親の氏に変更することができます(民法791条1項)。

民法上の姓と呼称上の姓
ところで、民法が規定している氏を「民法上の氏」と呼び、これに対して、戸籍に記載されている氏を「呼称上の氏」と呼んで区別することがあります。通常は、民法上の氏と呼称上の氏は一致していますが、両者が分離することもあります。

たとえば、横井一郎と正子が離婚し、両者の子である太郎の親権者を正子と定めた場合、正子の民法上の氏は旧姓の田中に戻りますが、婚氏続称を選択すると、横井姓が正子の呼称上の氏(戸籍上の氏)となり、民法上の氏と呼称上の氏は分離します。
ちなみに、この場合、太郎と正子の氏は呼称上の氏は同じ「横井」ですが、民法上の氏が異なります(正子は「田中」で、太郎は「横井」。)。
したがって、子が親権者である正子の戸籍に入るためには、791条の手続を経て、太郎の民法上の氏を、正子の民法上の氏に変更する必要があります(但し、太郎の戸籍上の氏は横井姓のまま変更ありません。)。所長のコラムです。