●利用規約等(定型約款)の内容に関するルール

利用規約等の定型約款の内容に関する民法の規定
改正民法では、定型約款の内容について、民法548条の2第2項において、以下のように規定されています。

相手方の権利を制限し、または義務を加重する条項であってその定型取引の態様及び実情並びに取引上の社会通念に照らして第1条第2項に規定する基本原則(※権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。これは一般に「信義則」といわれています。)に反して相手方の利益を一方的に害すると認められる条項については、合意しなかったものとみなす。」
定型約款の個別の条項が信義則に反すると認められるか否か
定型約款における、相手方の権利を制限し、または義務を加重する条項が、信義則に反すると認められるか否かについては、「その定型取引の態様」及び「その実情」並びに「取引上の社会通念に照らして」総合的に判断されることになります。
定型取引の態様
定型取引の場合、一般的に、相手方である顧客が定型約款の具体的な内容を認識しない場合が多いという特質があります。
とすれば、相手方である顧客にとって予測し難い内容の条項が置かれ、かつ、その条項が相手方に重大な不利益を課すものであるときは、相手方においてその内容を容易に知り得る措置を定型約款準備者が講じておかない限り、そのような条項は不意打ち的なものとして信義則に反する可能性が高いといえます。
ちなみに、信義則に反する不当な条項であるかを判断するに当たっては、不意打ち的要素が一つの重要な判断要素とはなりますが、不意打ち的な条項であるからという理由で直ちに信義則に反する不当な条項とされるのではなく、内容的な不当性との総合考慮が予定されています。
定型取引の実情
信義則に反する不当な条項であるか否かの判断に当たっては定型取引の一般的な特質だけでなく、個々の取引の実情、例えば、その取引において条項が設けられた理由や背景、その取引がどのような社会的・経済的活動に関して行われるものか、その取引においてその条項がどのように位置付けられるものか(その条項自体は相手方である顧客に負担を課すものであるが、他の条項の存在等によって取引全体ではバランスが取れたものとなっているのか)などが考慮されます。
例えば、定型約款が利用されている個別の取引類型における実情を具体的に見たときに、その条項を設ける必要性や相当性が低く、一般にそのような条項を設ける例も多くないことなどは、信義則に反する条項と判断される一要素として考慮されることになります。
取引上の社会通念
定型取引の態様や定型取引の実情以外にも、広くその種の取引において一般的に共有されている常識に照らして判断することも心要になるため、「取引上の社会通念」も考慮事由として明示されています。
変更後の内容の相当
「相手方の利益を一方的に害すると認められる条項」になる可能性があるものの例としては、以下のような場合が考えられます。

●相手方に高額な違約金あるいはキャンセル料を支払わせる条項
●定型約款準備者の故意又は重過失による損害賠償責任を免責する旨の条項など、その条項の内容自体に強い不当性が認められるもの
●売買契約において本来の目的となっていた商品に加えて想定外の別の商品の購入を義務付ける不当な抱合せ販売条項があるが、当該条項の存在が交渉の経緯や他の契約書面等から容易に認識することができないようなとき
●定型取引の商品には予想できない保守管理がついている条項があるが、当該条項の存在が交渉の経緯や他の契約書面等から容易に認識することができないようなとき
 

 

2020年04月09日