相続分という用語の多義性

「相続分」という用語は多義的です。

  • 相続分は,通常,法定相続分(900条)や指定相続分(902条)のように,相続人の本来の権利の割合を示します。これを,具体的相続分率との対比で,法定(指定)相続分率といいます。
  • 法定(指定)相続分率により計算した額を相続分と呼ぶことがあります(903条1項中段)。これを法定(指定)相続分額と呼びます。
  • みなし相続財産額{相続時の遺産の評価額ー寄与分+特別受益(遺贈は含まず)}×各相続人の法定(指定)相続分率+各相続人の寄与分ー各相続人の特別受益(遺贈を含む) 

    の式で算出した金額も相続分と呼ばれます(903条1項、904条の2第1項)。これを具体的相続分額といいます。
  • 各相続人の具体的相続分額の総額を分母とし,各相続人の具体的相続分額を分子とする割合も相続分と呼ばれることがあります。これを具体的相続分率といいます。
  • 以上のほか,遺産分割前の相続人の地位も相続分と呼ばれることがあります(905条の相続分の譲渡・取戻し)。
  • ちなみに,最終的に分配される金額(各人の特別受益や遺贈による取得分は別途あります。)は,分配可能な遺産総額(特別受益や遺贈の額は含まれません。)に具体的相続分率をかけるので,具体的相続分額とは必ずしも一致しません。