●民法改正と保証契約 その1

公証人による保証意思確認手続
(保証人が法人である場合を除く)

法人や個人事業主が主債務者となり、事業の為に負担した貸金等債務(金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務)に関し、個人が、貸金等債務の保証人(根保証に限定されません。)になろうとする場合には、公証人による保証意思の確認を経なければならないこととされています。この意思確認の手続を経ずに保証契約を締結しても、その契約は無効となります。
なお、この意思確認の手続は、主債務者の事業と関係の深い次のような方々については、不要とされています。

○ 主債務者が法人である場合 
  その法人の理事、取締役、執行役や、議決権の過半数を有する株主等

○ 主債務者が個人事業主である場合 
  主債務者と共同して事業を行っている共同事業者や、主債務者の事業に現に従事している主債務者の配偶者

すなわち、これから保証人になろうとする方は、保証契約をする前に、原則として公証役場に出向いて、保証意思確認の手続(保証意思宣明公正証書の作成の嘱託)を行うことになります。
保証意思宣明公正証書は、保証契約締結の日前1か月以内に作成されている必要があります。
この手続は、代理人に依頼することができません。本人自身が公証人から意思確認を受けることになります。公証人から、保証人になろうとする方が保証意思を有しているのかを確認されます。
保証をしようとしている主債務の具体的な内容を認識しているか、保証をすることで自らが代わりに支払などをしなければならなくなるという大きなリスクを負担するものであることを理解しているか、主債務者の財産・収支の状況等について主債務者からどのような情報の提供を受けたかなどについて確認を受けます。このほか、保証人になろうと思った動機・経緯などについても質問されることがあります。
その後、所要の手続を経て、保証意思が確認された場合には、公正証書(保証意思宣明公正証書)が作成されます。
保証人になることを主債務者が依頼する際の情報提供義務(保証人が法人である場合を除く)

債務者である法人や個人事業主が、事業のために負担する債務(貸金等債務に限定されません。)について保証人になることを他人(法人は含まれません)に依頼する場合には、主債務者は、保証人になるかどうかの判断に資する情報として、
(1)主債務者の財産や収支の状況
(2)主債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
(3)主債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

を提供しなければなりません。
これをしないか、もしくは誤った情報を提供したことにより委託を受けた者が誤認して保証人となった場合、それらのことを債権者が知っていたか、もしくは知ることができたときは、保証人となったものは保証契約を取消すことができます。
このルールは、事業用融資等の貸金等債務に限らず、売買代金やテナント料などの債務の保証をする場合にも適用されます。
主債務の履行状況に関する債務の提供義務
(主債務は事業のために負担したものに限られない。また、保証人が法人である場合も含まれる。)

保証人が主債務者の委託を受けて保証人になった場合には、保証人から請求があったときは、債権者は、保証人に対して、遅滞なく、主債務の元本及び主債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについて不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければなりません。
※この情報提供は、法人である保証人も求めることができます。
主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務
(主債務は事業のために負担したものに限られない。保証人が法人である場合を除く)

保証人が法人でなく個人である場合には、債権者は、主債務者が期限の利益を喪失したこと(債務者が分割金の支払を遅滞するなどしたときに一括払いの義務を負うこと)を債権者が知った時から2か月以内にその旨を保証人に通知しなければならないとされています。それをしないと、債権者は保証人に対し、遅延損害金の一部を請求できないことになります。

 

2020年03月10日